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作者:ChinoYami
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網址:http://blog.yam.com/chinoyami
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本部落所刊登之內容,皆由作者個人所提供,不代表 yam天空部落 本身立場。
July 28, 2007
因為有人要求看原文,所以特別另外把整個都一起打了上來 囧
直接打比較不花太多時間OTL翻譯是還要另外修文
原文本身並沒有分上中下篇,是為了分斷開讓各位好閱讀
避免太長的文章妨礙開啟速度及捲軸控制麻煩XD (另外前後段無H,中段有)
最近真的找不到時間翻譯整理中下篇,中篇還只翻譯到一半QQ
能讀日文的人可以先看這裡
畢竟語言不同因素,絕多數還是推薦學點日文去看原文會比較有原味
不希望因為翻譯而導致失去原本該有的味道
其實這次淵井樣寫的Lamento(包含主篇)的文章內容都並不難了解的哦
另外還是要特別註明
這是ChinoYami親自從書上打上來的,版權是歸屬於Nitro+CHiRAL社
有意轉載者請記得附本網誌原址並加入此段註明XD
雪消の空 (ゆきげのそら)
淵井 鏑(Kabura fujii)
陽の月が沈み始めると、森は早くも闇に包まれる。
ひっそりと輪郭を溶かす夜の森を、あるひとつの影が駆け抜けていく。
影は、吉良への道を急いでいた。
『虚ろ』が消えた今、森を警戒する必要はなくなった。
なのに急ぐのは、住みかで相方……コノエが待っているからだ。
それを思うと、とにかく早く帰りたくて仕方がなかった。
纏う衣の隙間から入り込む夜気が冷たい。冬が近づいてきている。
絨毯のように敷き詰められた茶色い枯れ葉たちをはねのけて、アサトはまっすぐに帰路を走った。
幽刻の谷を抜けて、吉良の村へ入る。
足早に奥へ進んでいくと、黒い空と切り立つ崖に紛れてぽつぽつと住みかが見えてきた。
同時に、外に出ている村の猫たちの姿も目につき始まる。
猫たちは気配に気付くと振り返ったが、以前のように嫌悪や畏怖の感情を向けてくることはなかった。
少しずつではあるが、村とのわだかまりが解けてきたのではないか。
そんな気がして、ほのかに嬉しくと思う。
以前から、吉良を憎いと思ったことはなかった。
怒りがなかったと言えば嘘になる。だが、何より悲しかった。
拒絶されることが、悲しかった。
だから、今のこの状況は素直に嬉しい。
そのことをぽつりとコノエに漏らすと、俺も嬉しいと言って笑っていた。
住みかは村のはずれにあった。
元々吉良の住みかはそれぞれ点在しているが、中でも特に離れた位置にある。
忌み子に対する仕打ちか。そんな風に思って悲嘆したこともあったが、今は気にしていない。
むしろ、村の猫たちの目が全く気にならないので、楽だとすら思っていた。
住みかの前に辿り着き、足を止める。
飛び込みたい気持ちを抑え、ゆっくりと深呼吸をしてからそっと扉を押し開ける。
冷えた夜に、柔らかな光が零れた。
「コノエ」
中を覗き込み、部屋の中央に座る背中へ声をかける。
淡く茶色がかった耳がぴくりと立ち、コノエが肩越した振り返った。
「おかえり」
「あぁ」
向けられた笑みに、ほっと安堵の息をつく。
早く帰りたくて焦っていた気持ちが、胸の中で溶けだしていく。
この微笑を見ると、いつも安らぐ。
後ろ手に扉を閉めて中へ入り、コノエの隣に座りながら、肩にかけていた袋を下ろす。
「保存してあるものがまだあったはずだから、肉はとってこなかった」
「あぁ。多すぎても仕方ないからな」
頷きながら、コノエが袋を拾い上げて立ち上がる。袋の中身を貯蓄壷へ移すためだ。
日々の生活は、もっぱら狩りを中心に過ごしていた。
狩りへは大体一週間に一、二度の割合で出かけている。二匹だけ暮らしだし、リビカはそれほど頻繁に食べなくとも平気だから、特別困るということはない。
大概はコノエも一緒に狩りへ出るが、貯えに余裕がある時は今日のようにひとりで出ることもある。
それ以外は各地を旅して回ったり、森を散策したりして穩やかに過ごしていた。
右腕をなくしたコノエのことを考えると無理はできない。だいぶうまく動けるようにはなったようだが、それでもまだ完全ではない。
今も、コノエは左手だけで器用に袋の中身を壷へ移していく。その姿を、じっと見守る。
もちろん、いつ何があっても助けに入れるようにだ。
「……っと」
木の実のひとつが袋から零れ、床に転がった。
それを拾おうと、コノエは手にしていた袋を下ろして身を屈めようとした。
「コノエ」
名を呼んで制し、すぐに立ち上がって代わりに木の実を拾う。
腕が自由にならないせいで普段から大変な思いをしているはずだ。
そんな思いをさせることになってしまった元凶は——他でもない、自分にある。
コノエが右腕を失うことになった原因。
決して忘れてはいけない。何より許しがたい過ちとして、深く胸にとどめておかなければならない。
だから、できる限りのことをしたかった。コノエの助けになりたい。
少しでもコノエが苦しまないようにしたい。
そう思いながら拾い上げた木の実を差し出す。
だが、コノエはいつまで経っても受け取ろうとしない。
不思議に思っていると、目が合った。
どきりとする。
その瞳に一瞬、怒りのような光がよぎったからだ。
突然、胸が不安に焦りに支配された。
自分は何が、怒らせるようなことをしただろうか?
「……やめろよ」
低く呟く声が響いた。
「いい」
「コノエ……?」
「いい。必要以上に助けてくれなくても」
唐突な言葉に戸惑う。
意味が分からず、ただうろたえる。
「でも……」
「いいんだ。……アサト」
コノエが強い眼差しを向けてくる。
「俺の右腕がなっくなったこと、自分のせいだと思ってるのか」
心臓が大きく跳ねた。息を呑む。時間が止まったかのように錯覚する。
唇を引き結び、俯いて耳を下げた。
何も答えることができない。
それは、今まさに自分が考えていたことだったからだ。
コノエは複雑な表情で右腕に左手を添えた。
「お前のせいじゃない」
静かに一言が、脳に鮮烈に突き刺さる。
いや、言葉だけでもない。穏やかであったはずの空気すらも肌を刺すようたっだ。
ずっと、踏み込むではいけない領域だと思っていたのだ。
これまでに様々なことを経験して乗り越えてきた。自分もコノエも、出会った時から確かに成長しているはずだ。
だが、消せない傷もたくさん負った。
もちろんそれらは抱えていく必要のある傷。
だからこそ……決して色褪せないからこそ、互いに口にすることはなかった。
特に右腕については触れてはならないと、少なくとも自分はそう思っていた。
だが、それは間違いたったのだろうか?
少しの沈黙のあと、コノエは右腕を見つめながらゆっくりと口を開いた。
「前にも言ったと思うけど、それは俺が生きてる証だ。お前と生きていくために、俺が選んだ道なんだ。だから、お前が罪の意識を感じる必要なんてない」
発される言葉のひとつひとつが、きつく胸に食い込む。
罪の意識を感じる必要なんてない──それは無理だ。
「でも……傷つけた。あの時のこと、俺は覚えている。はっきりとじゃない。けど、俺の体が……爪が、お前の体を引き裂いたこと、……覚えている」
固く拳を握り諦める。
尾の先端がかすかに震えた。
声が喉の奥で引っ掛かり、吐き出しづらい。
話しながら、映像が生々しい残酷さを伴って甦る。
あの時の、記憶。感触。
ひどいことをしてしまった。
ひどいことを──してしまった。
何度も夢を見た。そのたび、激しい後悔と罪悪感に苛まれた。自分は本当に一緒にいていいのかと夜が明けるまで考えた。
いっそ、同じように自分の右腕をもいでしまおうか。そう思ったこともあった。
そんなことをしても、コノエを悲しませるだけだとわかってはいるのだけれど。
「……アサト」
名を呼ばれ、顔を上げる。
コノエが双眸を細めていた。
「これも、前に言ったよな。苦しいがどうかを判断するのはお前じゃない。俺が決めることだって。だから、普通でいいんだ。この腕があった時みたいに、普通に接してくれれば」
「コノエ……」
「自分でどうしようもできなくなった時は、助けてくれって言うから。そしたら、手を貸してくれ」
そう言って、コノエは小さく笑った。
切ない疼きを感じて、俯く。
なんと言ったらいいのか、どう答えればいいのかわからなかった。
コノエが再び左手で自分の右腕に触れる。
「触れてみろよ」
「え……」
強く戸惑いながら視線を上げる。
ずっと、できる限り触れないようにしてきた。
コノエに負担をかけたくなかったからだ。
……いや。
もちろんそれもある。けれど。
本当は、目を逸らしていたのではないか。
傷を受け止めているつもりで、自分が犯した過ちから無意識に逃げれようとしていたのではないか。
だから、コノエの傷に「触ることができなかった」のではないか。
今さらこんなことに気付く。
そんな自分の気持ちに気付いて、愕然とする。
困惑してためらっていると、コノエがそっと手を掴んできた。
反射的に、思わず後ろへ引いてしまう。
それでもコノエは人差し指と中指を握り諦めてきた。そして、ゆっくりと誘導していく。
「……!」
指先が肘の部分に触れる。一瞬、息が止まった。
すでに塞がっている断面へ、指の腹が静かに押しつけられる。
それから、今度は指ではなく手のひらが同じ場所へと導かれた。
自分の手が湿っているのがわかる。ひどく緊張していた。
「感じるだろ?」
「……?」
「体温。血が通ってる。ちゃんと生きてる」
「……コノエ」
「まだ死んでない。なくなったから、それで終わりってわけじゃない。だからこの腕をそうやって……、見捨てないでほしい」
──見捨てる。
その言葉が何よりも深く重く、胸に響く。
自分の手を握るコノエの指に力がこもった。
見捨てる。
コノエは、そんな風に感じていたのか。悲しませていたのか。
全く気付かなかった。
驚きのあとに襲い来るのは猛烈な悔しさで、きつく眉根を寄せる。尾も耳も力なくうな垂れた。
「すまない。そんなつもりじゃ……」
「いいんだ。わかってる」
コノエは落ち着いた息を吐き出して、肩に額を擦りつけてきた。
薄く喉を鳴らす音が聞こえる。
どうすればいいのか迷いつつ、寄りかかってくるコノエを受け止めたくて、腕を回して抱き寄せた。
心臓の音が聞こえる。密着した体から、音と温度を共有する。
こうしていると、いつもひとつになったような気がするから不思議だ。
コノエの体を抱きしめながら、みちしるべの葉の淡い光に照らされた室内を眺める。
「あの時……」
コノエがぽつりと眩く。
「本当に、あのままでもいいと思ったんだ」
「あの時?」
「お前が、変わってしまった時」
「…………」
途端、自分でも体が強張るのがわかった。
だが、驚くことはない。
わかっている。コノエはおそらく、あえて一歩を踏み込んだのだ。
互いに封じ込めていた記憶の中へ。
「こうやって響いてくる心臓の音も、匂いも、同じだったんだ。どうな姿をしているかなんて問題じゃない。俺は、アサトと一緒にいたいんだって、そう思った。だから、腕だって惜しくない。今こうして過ごす時間のためだったんだって、思うから」
一言ずつ、想いをこめて発される言葉。
じわりと胸の奥から何かが染み出すような感覚がした。
コノエの言葉が、声が、心地良い。
お申し訳ない気持ちと感謝を伝えたくて、喉を鳴らしながらコノエの体を強く掻き抱いた。
右腕ごと、強く。
勝手に遠ざかり、距離を作っていたのは自分だった。
向き合っているつもりで、逃げていたのは自分だった。
本当に、何も変えがたい気持ちだった。
何も変えがたいものに支えられているのだと思った。
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直接打比較不花太多時間OTL翻譯是還要另外修文
原文本身並沒有分上中下篇,是為了分斷開讓各位好閱讀
避免太長的文章妨礙開啟速度及捲軸控制麻煩XD (另外前後段無H,中段有)
最近真的找不到時間翻譯整理中下篇,中篇還只翻譯到一半QQ
能讀日文的人可以先看這裡
畢竟語言不同因素,絕多數還是推薦學點日文去看原文會比較有原味
不希望因為翻譯而導致失去原本該有的味道
其實這次淵井樣寫的Lamento(包含主篇)的文章內容都並不難了解的哦
另外還是要特別註明
這是ChinoYami親自從書上打上來的,版權是歸屬於Nitro+CHiRAL社
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雪消の空 (ゆきげのそら)
淵井 鏑(Kabura fujii)
陽の月が沈み始めると、森は早くも闇に包まれる。
ひっそりと輪郭を溶かす夜の森を、あるひとつの影が駆け抜けていく。
影は、吉良への道を急いでいた。
『虚ろ』が消えた今、森を警戒する必要はなくなった。
なのに急ぐのは、住みかで相方……コノエが待っているからだ。
それを思うと、とにかく早く帰りたくて仕方がなかった。
纏う衣の隙間から入り込む夜気が冷たい。冬が近づいてきている。
絨毯のように敷き詰められた茶色い枯れ葉たちをはねのけて、アサトはまっすぐに帰路を走った。
幽刻の谷を抜けて、吉良の村へ入る。
足早に奥へ進んでいくと、黒い空と切り立つ崖に紛れてぽつぽつと住みかが見えてきた。
同時に、外に出ている村の猫たちの姿も目につき始まる。
猫たちは気配に気付くと振り返ったが、以前のように嫌悪や畏怖の感情を向けてくることはなかった。
少しずつではあるが、村とのわだかまりが解けてきたのではないか。
そんな気がして、ほのかに嬉しくと思う。
以前から、吉良を憎いと思ったことはなかった。
怒りがなかったと言えば嘘になる。だが、何より悲しかった。
拒絶されることが、悲しかった。
だから、今のこの状況は素直に嬉しい。
そのことをぽつりとコノエに漏らすと、俺も嬉しいと言って笑っていた。
住みかは村のはずれにあった。
元々吉良の住みかはそれぞれ点在しているが、中でも特に離れた位置にある。
忌み子に対する仕打ちか。そんな風に思って悲嘆したこともあったが、今は気にしていない。
むしろ、村の猫たちの目が全く気にならないので、楽だとすら思っていた。
住みかの前に辿り着き、足を止める。
飛び込みたい気持ちを抑え、ゆっくりと深呼吸をしてからそっと扉を押し開ける。
冷えた夜に、柔らかな光が零れた。
「コノエ」
中を覗き込み、部屋の中央に座る背中へ声をかける。
淡く茶色がかった耳がぴくりと立ち、コノエが肩越した振り返った。
「おかえり」
「あぁ」
向けられた笑みに、ほっと安堵の息をつく。
早く帰りたくて焦っていた気持ちが、胸の中で溶けだしていく。
この微笑を見ると、いつも安らぐ。
後ろ手に扉を閉めて中へ入り、コノエの隣に座りながら、肩にかけていた袋を下ろす。
「保存してあるものがまだあったはずだから、肉はとってこなかった」
「あぁ。多すぎても仕方ないからな」
頷きながら、コノエが袋を拾い上げて立ち上がる。袋の中身を貯蓄壷へ移すためだ。
日々の生活は、もっぱら狩りを中心に過ごしていた。
狩りへは大体一週間に一、二度の割合で出かけている。二匹だけ暮らしだし、リビカはそれほど頻繁に食べなくとも平気だから、特別困るということはない。
大概はコノエも一緒に狩りへ出るが、貯えに余裕がある時は今日のようにひとりで出ることもある。
それ以外は各地を旅して回ったり、森を散策したりして穩やかに過ごしていた。
右腕をなくしたコノエのことを考えると無理はできない。だいぶうまく動けるようにはなったようだが、それでもまだ完全ではない。
今も、コノエは左手だけで器用に袋の中身を壷へ移していく。その姿を、じっと見守る。
もちろん、いつ何があっても助けに入れるようにだ。
「……っと」
木の実のひとつが袋から零れ、床に転がった。
それを拾おうと、コノエは手にしていた袋を下ろして身を屈めようとした。
「コノエ」
名を呼んで制し、すぐに立ち上がって代わりに木の実を拾う。
腕が自由にならないせいで普段から大変な思いをしているはずだ。
そんな思いをさせることになってしまった元凶は——他でもない、自分にある。
コノエが右腕を失うことになった原因。
決して忘れてはいけない。何より許しがたい過ちとして、深く胸にとどめておかなければならない。
だから、できる限りのことをしたかった。コノエの助けになりたい。
少しでもコノエが苦しまないようにしたい。
そう思いながら拾い上げた木の実を差し出す。
だが、コノエはいつまで経っても受け取ろうとしない。
不思議に思っていると、目が合った。
どきりとする。
その瞳に一瞬、怒りのような光がよぎったからだ。
突然、胸が不安に焦りに支配された。
自分は何が、怒らせるようなことをしただろうか?
「……やめろよ」
低く呟く声が響いた。
「いい」
「コノエ……?」
「いい。必要以上に助けてくれなくても」
唐突な言葉に戸惑う。
意味が分からず、ただうろたえる。
「でも……」
「いいんだ。……アサト」
コノエが強い眼差しを向けてくる。
「俺の右腕がなっくなったこと、自分のせいだと思ってるのか」
心臓が大きく跳ねた。息を呑む。時間が止まったかのように錯覚する。
唇を引き結び、俯いて耳を下げた。
何も答えることができない。
それは、今まさに自分が考えていたことだったからだ。
コノエは複雑な表情で右腕に左手を添えた。
「お前のせいじゃない」
静かに一言が、脳に鮮烈に突き刺さる。
いや、言葉だけでもない。穏やかであったはずの空気すらも肌を刺すようたっだ。
ずっと、踏み込むではいけない領域だと思っていたのだ。
これまでに様々なことを経験して乗り越えてきた。自分もコノエも、出会った時から確かに成長しているはずだ。
だが、消せない傷もたくさん負った。
もちろんそれらは抱えていく必要のある傷。
だからこそ……決して色褪せないからこそ、互いに口にすることはなかった。
特に右腕については触れてはならないと、少なくとも自分はそう思っていた。
だが、それは間違いたったのだろうか?
少しの沈黙のあと、コノエは右腕を見つめながらゆっくりと口を開いた。
「前にも言ったと思うけど、それは俺が生きてる証だ。お前と生きていくために、俺が選んだ道なんだ。だから、お前が罪の意識を感じる必要なんてない」
発される言葉のひとつひとつが、きつく胸に食い込む。
罪の意識を感じる必要なんてない──それは無理だ。
「でも……傷つけた。あの時のこと、俺は覚えている。はっきりとじゃない。けど、俺の体が……爪が、お前の体を引き裂いたこと、……覚えている」
固く拳を握り諦める。
尾の先端がかすかに震えた。
声が喉の奥で引っ掛かり、吐き出しづらい。
話しながら、映像が生々しい残酷さを伴って甦る。
あの時の、記憶。感触。
ひどいことをしてしまった。
ひどいことを──してしまった。
何度も夢を見た。そのたび、激しい後悔と罪悪感に苛まれた。自分は本当に一緒にいていいのかと夜が明けるまで考えた。
いっそ、同じように自分の右腕をもいでしまおうか。そう思ったこともあった。
そんなことをしても、コノエを悲しませるだけだとわかってはいるのだけれど。
「……アサト」
名を呼ばれ、顔を上げる。
コノエが双眸を細めていた。
「これも、前に言ったよな。苦しいがどうかを判断するのはお前じゃない。俺が決めることだって。だから、普通でいいんだ。この腕があった時みたいに、普通に接してくれれば」
「コノエ……」
「自分でどうしようもできなくなった時は、助けてくれって言うから。そしたら、手を貸してくれ」
そう言って、コノエは小さく笑った。
切ない疼きを感じて、俯く。
なんと言ったらいいのか、どう答えればいいのかわからなかった。
コノエが再び左手で自分の右腕に触れる。
「触れてみろよ」
「え……」
強く戸惑いながら視線を上げる。
ずっと、できる限り触れないようにしてきた。
コノエに負担をかけたくなかったからだ。
……いや。
もちろんそれもある。けれど。
本当は、目を逸らしていたのではないか。
傷を受け止めているつもりで、自分が犯した過ちから無意識に逃げれようとしていたのではないか。
だから、コノエの傷に「触ることができなかった」のではないか。
今さらこんなことに気付く。
そんな自分の気持ちに気付いて、愕然とする。
困惑してためらっていると、コノエがそっと手を掴んできた。
反射的に、思わず後ろへ引いてしまう。
それでもコノエは人差し指と中指を握り諦めてきた。そして、ゆっくりと誘導していく。
「……!」
指先が肘の部分に触れる。一瞬、息が止まった。
すでに塞がっている断面へ、指の腹が静かに押しつけられる。
それから、今度は指ではなく手のひらが同じ場所へと導かれた。
自分の手が湿っているのがわかる。ひどく緊張していた。
「感じるだろ?」
「……?」
「体温。血が通ってる。ちゃんと生きてる」
「……コノエ」
「まだ死んでない。なくなったから、それで終わりってわけじゃない。だからこの腕をそうやって……、見捨てないでほしい」
──見捨てる。
その言葉が何よりも深く重く、胸に響く。
自分の手を握るコノエの指に力がこもった。
見捨てる。
コノエは、そんな風に感じていたのか。悲しませていたのか。
全く気付かなかった。
驚きのあとに襲い来るのは猛烈な悔しさで、きつく眉根を寄せる。尾も耳も力なくうな垂れた。
「すまない。そんなつもりじゃ……」
「いいんだ。わかってる」
コノエは落ち着いた息を吐き出して、肩に額を擦りつけてきた。
薄く喉を鳴らす音が聞こえる。
どうすればいいのか迷いつつ、寄りかかってくるコノエを受け止めたくて、腕を回して抱き寄せた。
心臓の音が聞こえる。密着した体から、音と温度を共有する。
こうしていると、いつもひとつになったような気がするから不思議だ。
コノエの体を抱きしめながら、みちしるべの葉の淡い光に照らされた室内を眺める。
「あの時……」
コノエがぽつりと眩く。
「本当に、あのままでもいいと思ったんだ」
「あの時?」
「お前が、変わってしまった時」
「…………」
途端、自分でも体が強張るのがわかった。
だが、驚くことはない。
わかっている。コノエはおそらく、あえて一歩を踏み込んだのだ。
互いに封じ込めていた記憶の中へ。
「こうやって響いてくる心臓の音も、匂いも、同じだったんだ。どうな姿をしているかなんて問題じゃない。俺は、アサトと一緒にいたいんだって、そう思った。だから、腕だって惜しくない。今こうして過ごす時間のためだったんだって、思うから」
一言ずつ、想いをこめて発される言葉。
じわりと胸の奥から何かが染み出すような感覚がした。
コノエの言葉が、声が、心地良い。
お申し訳ない気持ちと感謝を伝えたくて、喉を鳴らしながらコノエの体を強く掻き抱いた。
右腕ごと、強く。
勝手に遠ざかり、距離を作っていたのは自分だった。
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本当に、何も変えがたい気持ちだった。
何も変えがたいものに支えられているのだと思った。
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